2009 年 2 月 のアーカイブ

不眠症の鍼灸治療とセルフケア

2009 年 2 月 22 日 日曜日

立春を過ぎ、暦の上では春になりました。
風は、まだまだ冷たいですが、日差しは徐々に春めいてきています。

春眠暁を覚えず

春は、何となく眠たい季節ですね。
しかし、現代のストレス社会では、不眠症に悩む方も多いようです。
日本人を対象にした調査では、5人に1人。60歳以上では、3人に1人が、何らかの不眠状態であると回答しています。

1.不眠症とは
入眠障害、中途覚醒、早朝覚醒、熟眠障害などの睡眠問題が1ヶ月以上続き、日中に倦怠感、意欲低下、集中力低下、食欲低下などの不調が出現する病気です。

2.原因
様々な原因があり、症状の一つとてして不眠症を訴える場合が多い。

Ⅰ.ストレス
 ・身体的・精神的ストレスによる緊張状態。

Ⅱ.身体の病気
 ・痛み、かゆみ、呼吸困難、咳、頻尿を伴う疾患。
 ・最近では、睡眠時無呼吸症候群やムズムズ脚症候群によるものも多い。

Ⅳ.心の病気
 ・うつ病、神経症、統合失調症など。

Ⅴ.薬物、刺激物の服用
 ・治療薬の中には不眠になるものもある。
 ・コーヒー、紅茶、タバコなど。

Ⅵ.生活習慣や環境
 ・夜勤、宵っ張り、寝室の温度や湿度、騒音など。

3.症状
睡眠時間が短い、何度も目が覚めるということがあっても、日中に精神や身体の不調による生活の質が低下がなければ、不眠症とは診断されません。

Ⅰ.入眠障害
 ・布団に入っても、なかなか寝付けない。

Ⅱ.中途覚醒
 ・眠りが浅く夜中に何度も目が覚める。

Ⅲ.早朝覚醒
 ・早朝に目覚めてしまう。

Ⅴ.熟眠障害
 ・ある程度眠っても熟睡感が得られない。

4.治療法
Ⅰ.基礎疾患の診断と治療
 ・身体や心の病気が原因の場合、その病気に対する治療を優先する。

Ⅱ.薬物療法
 ・睡眠薬、抗不安薬、抗うつ薬など。

Ⅲ.心理療法
 ・カウンセリング、自律神経訓練など。

鍼灸やマッサージは、全身の緊張を緩めて心身をりラックスさせる効果があります。Ⅰ~Ⅲの治療法と併用する事で不眠症の治療に効果的です。
不眠を訴える患者さんには、頭部のブヨブヨとした浮腫感、左右の肩甲骨の間~背中と腰の境付近の筋肉(脊柱起立筋)にゴリゴリとした硬結(こり)があることが多いように思います。これらの症状を解消する事が、治療のポイントになるのではないかと感じています。

東洋医学の古典には「夜になって眠る時に血が肝に帰る」という記載があります。逆に言うと、肝の作用により全身に送られていた血が、肝に帰れないと不眠になるということです。
何らかの要因によって、心身のバランスが乱れて血の消耗や血の停滞が起こると、肝に血が帰れない状態となります。
鍼灸は、寒熱や気・血・水分を調整し、全身のバランスを整えることで不眠の治療を行います。

5.セルフケア
就寝前に行うリラックス法をご紹介します。
基礎疾患をお持ちの方は、主治医と相談しながら行ってください。
また、痛くない程度に無理のない範囲で行ってください。

Ⅰ.耳のマッサージ
・耳の上部分をつまみ、ねじったり引っ張ったりする。
・しばらく行うと局所が柔らかくなりポカポカと暖かくなる。

Ⅱ.首回し
・一周30秒位、ゆっくりと首を回す。
・力を抜いて口をポカンと開けたまま息を吐きながら。
・重さに任せ、ゆっくりと頭を転がす感じで。
・引っ掛かりを感じる箇所は入念に。

Ⅲ.足裏さすり
・足裏と手掌を重ね合わせ、優しく撫でるように足裏全体をさする。
・足裏と手掌が、一体になるようなイメージで。
・呼吸は、足裏から息を吐くイメージでゆっくりと。

Ⅳ.脱力ポーズ
・仰向けに寝て、手掌が目の裏側に当たるように両手を頭の後で組む。
・脚を気持ちの良い方向に組んでリラックスする。

文京鍼研究会 2月の定例会

2009 年 2 月 16 日 月曜日

日曜日に文京鍼研究会の定例会に出席しました。
講義内容は、下記の通りです。

・古典研究 13:00~14:20
  「生理・病理・治療法則を貫く基本原理からの考察」 
・臨床講座 14:30~15:30
  「支部会報告 臨床転用と解説」
  「支部会報告 経病の臨床応用」  
・実技練習 15:30~17:00

講義の資料は、文京鍼研究会のホームページにて随時公開されています。
興味のある方は、右側の「リンク」からどうぞ。

顎関節症の鍼灸治療とセルフケア

2009 年 2 月 8 日 日曜日

現代の日本人は硬いものを食べなくなり、顎の発達が悪くなったと言われています。
その影響からか、顎関節症でお悩みの方が年々増加しています。

1.顎関節症とは
顎関節や周辺の筋肉などに異常があり、「顎が痛い」「顎が鳴る」「口が開けづらい」などが主な症状の慢性的な疾患です。
20代~30代の女性に多く、上記のような症状の他に首・肩のこりなどの全身症状を伴う場合が多いです。

2.原因
精神的・肉体的ストレスによる「歯の食いしばり」「歯ぎしり」や偏咀嚼による筋肉・関節への負担、不正咬合、外傷などがありますが、私は、精神的ストレスに起因するものが大半だと感じています。

3.症状
Ⅰ.顎が痛い
・顎関節及び周辺の頬やこめかみの痛み。
・口の開閉、食べ物を噛むなど、顎を動かした時に痛む。

Ⅱ.開口障害
・正常な場合、指が縦に3本分以上入るが、1~2本程度しか入らない。

Ⅲ.顎関節の異音
・顎を動かした際、耳の前あたりで「カクカク」「ジャリジャリ」「ミシミシ」といった音がする。

Ⅳ.顎周辺の違和感
・顎の動きに変化が生じて噛み合わせが変わったような違和感を感じることがある。

Ⅴ.様々な全身症状を伴う
・頭痛、首・肩・背中の痛み、腰痛、肩こり、耳の痛み、耳鳴り、耳閉感、難聴、めまい、目の疲れ、歯の痛み、嚥下困難などを伴う場合がもある。

4.顎関節症のタイプ
Ⅰ.筋肉の障害によって起こるタイプ。
Ⅱ.関節包・靱帯の障害によって起こるタイプ。
Ⅲ.関節円板の障害によって起こるタイプ。
Ⅳ.変形性関節症によって起こるタイプ。
Ⅴ.Ⅰ~Ⅳが混合したタイプ。

上記のように様々なタイプがありますが、最近の研究では、筋・筋膜性疼痛(MPS)や線維筋痛症(FMS)と呼ばれる全身症状を伴った「筋肉の障害によるもの」が多いという報告もされています。

5.治療法
口腔外科や歯科などでの薬物療法(筋弛緩薬・局所麻酔、抗炎症薬・抗うつ薬など)、運動療法、スプリント、外科療法、咬合療法などがあります。
全身症状にも対応可能な鍼治療やマッサージは、身体への侵襲も少なく、セルフケアと並行して行う事により治療効果が高まります。

6.セルフケア
咀嚼筋のストレッチが有効ですが、痛みの激しい時は行わないようにしてください。
また、ストレッチの際は、痛過ぎない範囲内で慎重に行ってください。
ご紹介するのは、ASTR(Active Soft Tissue Release)というストレッチ法で、トリガーポイント(硬結・圧痛点)を押圧しながら行うのが特徴です。
トリガーポイントを押圧することにより、少ない関節可動域で効果的なストレッチが可能です。
痛くて大きく開口できなくても、開口可能な範囲内で十分なストレッチ効果があります。

Ⅰ.側頭筋のストレッチ
・こめかみ~耳の上付近にある筋肉です。
・口の開閉で動く場所から圧痛点(押すと痛い所)を探します。
・圧痛点を頭頂部方向に押しながら、口をゆっくりと痛過ぎない範囲で5~6回開閉します。
・圧痛点が複数ある場合、圧痛点ごとに上記の動作を繰り返します。

Ⅱ.咬筋のストレッチ
・耳の穴の前方、頬骨弓という骨の部分の下にある筋肉です。
・口の開閉で動く箇所の圧痛点を探し、側頭筋と同じ要領で口を開閉します。

Ⅲ.内側翼突筋のストレッチ
・下顎角(エラの部分)という骨の部分のう内側にあるので触れにくい。
・下顎角の内側の圧痛点を押しながら、側頭筋と同じ要領で開閉します。

Ⅳ.外側翼突筋のストレッチ
・耳の穴の前付近の深い所にあるので、ほとんど触る事ができません。
・どこも押さずに顎を前方に突き出す、後方に引く(上の前歯を突き出すイメージ)を数回繰り返します。